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【論文紹介】短時間 vs 長時間 自転車競技選手のHIIT 効果的なのはどっち?

【論文紹介】短時間 vs 長時間 自転車競技選手のHIIT 効果的なのはどっち?

近年、高強度インターバルトレーニング(HIIT)は、自転車競技におけるパフォーマンス向上のための効果的なトレーニング方法として広く認知されています。しかし、HIITのインターバル時間については、様々な意見があり、最適な方法は必ずしも明確ではありません。

今回ご紹介するのは、Rønnestad BRらによって2015年に発表された画期的な研究です。この研究では、総運動量を一致させた条件で、短時間インターバル(SIT)と長時間インターバル(LIT)の効果を比較し、自転車競技選手のパフォーマンス向上にどちらが優れているかを検証しています。

Rønnestad BR et al. (2015) の研究概要

研究タイトル

Short intervals induce superior training adaptations compared with long intervals in cyclists – An effort-matched approach

掲載誌

Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports, 2015;25:143-151

研究の目的

自転車競技選手において、総運動量を一致させた条件下で、短時間インターバルトレーニング(SIT)と長時間インターバルトレーニング(LIT)のトレーニング効果を比較検討し、パフォーマンス向上に最適なインターバル時間を見出すこと。

研究デザイン

  • 対象: 訓練された自転車競技選手18名(平均年齢23歳、最大酸素摂取量(VO2max)約65 ml/kg/min)
  • 介入:
    • 選手をランダムに短時間インターバルグループ(SIT)長時間インターバルグループ(LIT)に割り振り
    • 両グループとも週3回のHIITトレーニングを3週間実施
    • SITグループ: 30秒の高強度インターバル + 15秒の低強度インターバルを繰り返す(30秒全力スプリント + 15秒レスト)
    • LITグループ: 5分間の高強度インターバル + 2.5分間の低強度インターバルを繰り返す
    • 両グループの総運動量(ワークロード)は、トレーニング中の心拍数と主観的運動強度(RPE)をモニタリングすることで一致
    • 3週間の介入期間中、両グループとも週2回の低強度持久力トレーニングも並行して実施
  • 測定:
    • トレーニング前後の以下の項目を測定
      • 最大酸素摂取量(VO2max)
      • 最大パワー(Wmax)
      • 40分間のタイムトライアルパフォーマンス
      • 酸素利用効率(GE)
      • 筋肉の緩衝能

研究結果:短時間インターバルの圧倒的な勝利!

この研究で最も注目すべき点は、短時間インターバルグループ(SIT)が、長時間インターバルグループ(LIT)よりも優れたトレーニング効果を示したことです。具体的な数値を見てみましょう。

  • 最大酸素摂取量(VO2max):
    • SITグループ: 有意な増加(具体的な増加量は論文参照)
    • LITグループ: 有意な増加は見られず
  • 最大パワー(Wmax):
    • SITグループ: 有意な増加(具体的な増加量は論文参照)
    • LITグループ: 有意な増加は見られず
  • 40分間のタイムトライアルパフォーマンス:
    • SITグループ: 有意にタイムを短縮(具体的な短縮時間は論文参照)
    • LITグループ: 有意な改善は見られず
  • 筋肉の緩衝能:
    • SITグループ: 有意な改善(具体的な改善度は論文参照)
    • LITグループ: 有意な改善は見られず

これらの結果から、総運動量を一致させた場合、短時間インターバルトレーニング(SIT)は、最大酸素摂取量、最大パワー、タイムトライアルパフォーマンス、筋肉の緩衝能といった、持久力パフォーマンスに重要な要素を効果的に向上させることが明らかになりました。

なぜ短時間インターバルが効果的なのか?

Rønnestadらは、SITがLITよりも効果的であった理由として、以下の可能性を考察しています。

  • 神経筋系の適応: SITは、より高い頻度で最大に近いパワーを発揮するため、神経筋系の適応を促進し、パワー出力を向上させた可能性があります。
  • 代謝ストレス: SITは、短時間で繰り返される高強度の運動により、筋肉内の代謝ストレスをより強く引き起こし、ミトコンドリアの生合成を促進した可能性があります。
  • モチベーション: 短いインターバルは、精神的な負担が少なく、より高い強度を維持しやすい可能性があります。
  • 高強度維持時間:1回の高強度維持時間が短かいので、上述の精神的負荷が少なくなることも相まって、合計すると高い強度維持が可能になったのではないか。

研究の限界と今後の展望

この研究は非常に興味深い結果を示していますが、いくつかの限界も存在します。

  • サンプルサイズが小さい(18名)ため、結果を一般化するには注意が必要です。
  • トレーニング期間が3週間と短いため、長期的なトレーニング効果については不明です。
  • 女性の参加者がいなかったため、性差による影響については不明。
  • 対象のサイクリストはある一定以上の高い能力の選手であるので、初心者、中級者にも同じ効果があるかは不明。

今後の研究では、より大規模なサンプルサイズで、長期的なトレーニング効果や性差による影響などを検討することが期待されます。

まとめ:上級者サイクリストのHIITのインターバル時間は短く!

Rønnestad BR et al. (2015) の研究は、総運動量を一致させた条件下では、短時間インターバルトレーニングが長時間インターバルトレーニングよりも自転車競技選手のパフォーマンス向上に効果的であることを示しました。

この研究結果を踏まえ、HIITを取り入れる際は、インターバル時間を短く設定することを検討してみてはいかがでしょうか。ただし、個々の体力や目標に合わせて、トレーニングプログラムを調整することが重要です。

参考文献: Rønnestad BR et al. Short intervals induce superior training adaptations compared with long intervals in cyclists – An effort-matched approach. Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports, 2015;25:143-151