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いつもの筋トレを「低酸素」で効果倍増?

いつもの筋トレを「低酸素」で効果倍増?

「もっと強く、もっと効率的に」と願うのは、目標に向かって努力するすべての人に共通する思いではないでしょうか。重量、回数、セット数…私たちは様々な数値を追い求めていますが、もし、それらと同じくらい「トレーニング環境」が重要だとしたら?

2024年に権威ある学術誌『European Journal of Applied Physiology』に掲載されたある研究が、私たちのトレーニングの常識を覆すかもしれない、非常に興味深い結果を報告しています。

同じ頑張りなのに、結果が違う?研究が解き明かした「環境」の力

この研究では、33人の被験者を3つのグループに分け、8週間にわたって同じ筋力トレーニング(バックスクワットやベンチプレスなど6種目)を行いました。違いはただ一つ、トレーニングを行う「環境」だけです。

  • グループ1: いつも通りの「通常環境」(平地)
  • グループ2: 機械で人工的に作り出した「低酸素環境」(標高約2300m相当)
  • グループ3: 実際の高地で行う「低圧・低酸素環境」(標高約2300m)

8週間後、彼らの身体には驚くべき違いが現れました。

研究結果のハイライト

ポイント①:バックスクワットの筋力「向上率」が約2倍に!
最も衝撃的だったのは、下半身の筋力です。低酸素環境でトレーニングしたグループの筋力向上率は平均 22% を超え、通常環境グループの 11.5% と比べて、その"伸び率"が約2倍に達したのです。(※挙上重量そのものが2倍になったわけではありません)
また、バックスクワット以外のベンチプレスなどでは、大きな差は確認できませんでした。これは、より多くの筋肉を動員するバックスクワットでは低酸素の影響が大きく現れ、少ない筋肉の動員では差が出るだけの運動期間、回数が少なかった可能性が考えられます。

ポイント②:トレーニング中の「キツさ」は変わらない
「低酸素って、すごくキツそう…」と思いますよね。しかし、研究では運動中の主観的なキツさ(RPE)や心拍数に、グループ間で大きな差は見られませんでした。これは、「同じ頑張りなのに、得られる結果が格段に大きい」ことを意味します。

ポイント③:回復力も高まる可能性
さらに、実際の高地でトレーニングしたグループは、運動後の心拍数の回復が早い傾向にありました。質の高いトレーニングの継続には、素早い回復が不可欠。これも見逃せないポイントですが、高地に行って筋トレを行うのは、余り現実的ではないかもしれませんね。

「低酸素環境下での筋力トレーニングは、より高い生理的ストレスをかけることなく、特にバックスクワットの筋力レベルを向上させるための、時間効率の良い方法である可能性がある」
Lara Rodríguez-Zamora et al. (2024). European Journal of Applied Physiology.

なぜ「低酸素」が筋肉を成長させるのか?

なぜこのような違いが生まれるのでしょうか?
詳しいメカニズムは複雑ですが、簡単に言えば、体が「酸素が少ないぞ!」と感じることで、普段は眠っている成長スイッチが強力にオンになるイメージです。体は厳しい環境に適応しようと、筋肉の成長を促す代謝産物をより多く生み出します。その結果が、今回の研究のような驚くべき筋力向上につながったと考えられています。

その「特別な環境」を、あなたの日常に。

「でも、高地トレーニングなんて、トップアスリートだけの話でしょう?」

かつてはそうでした。しかし今、科学技術の進歩によって、その特別な環境を、いつでも、どこでも再現することが可能になっています。

この研究で使われた「人工的な低酸素環境」も、まさに「低酸素ジェネレーター」という専門機器によって作られたものです。この技術を使えば、ご自宅のトレーニングルームやいつものジムを、最先端の科学に基づいた「成長のための最適な環境」へと変えることができるのです。

まとめ:トレーニングの質は、「何を」「どれだけ」に加えて「どこで」行うかで決まる

今回の論文は、トレーニングの成果を最大化するための新しい視点を私たちに与えてくれます。それは、運動量や重さだけでなく、「環境」もまた、成長を左右する極めて重要な要素であるということです。

もしあなたが、現在のトレーニングの停滞を打破したい、あるいはもっと効率的に目標を達成したいと願うなら、トレーニング環境を見直してみてはいかがでしょうか。