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【研究論文紹介】IHT(間欠的低酸素トレーニング)でサイクリストのパフォーマンス向上

【研究論文紹介】間欠的低酸素トレーニングでサイクリストのパフォーマンス向上 タイムトライアルで82秒短縮!

こんにちは!今回はスポーツ科学の分野から、興味深い研究論文をご紹介します。

今回ご紹介する論文は、2011年「Journal of Sports Science and Medicine」に掲載された「The effects of intermittent hypoxic training on aerobic capacity and endurance performance in cyclists」という研究論文です。

この研究では、間欠的低酸素トレーニング(IHT)が、トレーニングされたサイクリストの有酸素能力と持久力パフォーマンスにどのような影響を与えるかを調査しています。

研究の背景

近年、高地トレーニングや低酸素環境下でのトレーニングが、持久力向上に効果的であることが知られています。しかし、具体的にどのようなトレーニング方法が効果的なのか、そのメカニズムについてはまだ解明されていない部分も多くあります。

この研究では、特に間欠的低酸素トレーニング(IHT)という方法に焦点を当て、トレーニングされたサイクリストを対象に、その効果を検証しています。

研究の方法

研究では、20名の男性エリートサイクリストを対象に、以下の2つのグループに分け、トレーニングプログラムを実施しました。

  • 低酸素グループ(Hグループ):
    • 低酸素環境(酸素濃度15.2%)下で、週3回のトレーニングを実施
    • トレーニング強度:乳酸閾値(LT)の95%
    • トレーニング時間:1週目30分、2週目35分、3週目40分
  • 対照グループ(Cグループ):
    • 通常の酸素環境下でトレーニングを実施
    • トレーニング強度:乳酸閾値(LT)の100%

両グループとも、その他のトレーニング(ウォーミングアップ、クールダウン、低強度でのライド)は同じ条件で行いました。トレーニング前後に、以下の指標を測定し、パフォーマンスの変化を評価しました。

  • 最大酸素摂取量(VO2max)
  • 乳酸閾値での酸素摂取量(VO2LT)
  • 最大ワークロード(WRmax)
  • 乳酸閾値ワークロード(WRLT)
  • 漸増負荷運動中の乳酸濃度変化(ΔLA)
  • 30kmタイムトライアルのタイム、平均パワー、平均速度
  • 血液指標(赤血球数、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット値など)
  • クレアチンキナーゼ活性(CK)

研究の結果

研究の結果、以下の点が明らかになりました。

  • 有酸素能力:低酸素グループ(Hグループ)は、VO2max、VO2LT、WRmax、WRLT、ΔLAにおいて、有意な増加を示しました。
  • 持久力パフォーマンス:低酸素グループ(Hグループ)は、30kmタイムトライアルのタイムを平均82秒短縮し、平均パワーと平均速度を有意に増加させました。対照グループは、平均18秒の短縮でした。
  • 血液指標:IHTは血液指標に大きな影響を与えませんでしたが、平均赤血球容積(MCV)がHグループで有意に増加しました。
  • その他:IHT後、Hグループでは心拍数(HRavg)が減少し、クレアチンキナーゼ活性(ΔCK)が有意に低下しました。

研究の考察

この研究から、以下のことが示唆されました。

  • 間欠的低酸素トレーニング(IHT)は、乳酸閾値に近い強度で中程度の時間行うことで、トレーニングされたサイクリストの有酸素能力と持久力パフォーマンスを向上させる可能性がある。
  • IHTは、主に筋肉や細胞レベルでの適応を促進し、血液指標には大きな影響を与えないと考えられる。
  • IHTが持久力パフォーマンスを向上させるメカニズムとして、ミトコンドリア密度の増加、毛細血管密度の増加、酸性化への対応力向上、乳酸輸送を促進するMCTの増加などが考えられる。

まとめ

この研究は、間欠的低酸素トレーニング(IHT)が、トレーニングされたサイクリストのパフォーマンス向上に有効なトレーニング方法となりうることを示唆しています。特に、30kmタイムトライアルで平均82秒もの短縮が見られたことは、注目すべき結果と言えるでしょう。

ただし、IHTの効果はトレーニング強度や時間、個人の生理的特性に依存する可能性があり、最適なトレーニング方法を確立するためには、さらなる研究が必要となります。

※このブログ記事は、学術論文の内容を元に作成されたものです。

参考文献

Czuba, M., Waskiewicz, Z., Zajac, A., Poprzecki, S., Cholewa, J., & Roczniok, R. (2011). The effects of intermittent hypoxic training on aerobic capacity and endurance performance in cyclists. *Journal of Sports Science and Medicine*, *10*(1), 175-183.