【研究論文紹介】低酸素トレーニングがサッカー選手の走行距離を大幅アップ!
【研究論文紹介】低酸素トレーニングがサッカー選手の走行距離を大幅アップ!
今回は、サッカー選手のパフォーマンス向上に役立つ可能性のある興味深い研究論文をご紹介します。 「Repeated-Sprint Training in Hypoxia Improves Match Running Performance in Well-Trained Soccer Players」(Faiss et al., 2013)という論文です。
サッカー選手を対象として行われておりますが、バスケットボールやテニス、水泳、自転車など、他の競技にも当てはまる部分は多いと思われます。
研究の背景と目的
サッカーの試合で、選手たちがどれだけ走り、どれだけスプリントできるかは、試合結果を左右する重要な要素です。この研究では、低酸素環境下での反復スプリントトレーニング(RSH)が、プロのサッカー選手の試合中の走行パフォーマンスにどのような影響を与えるのかを調べました。
研究方法
被験者
- プロサッカー選手20名
- 平均年齢:23.5 ± 3.3歳
- 平均身長:179.7 ± 5.8cm
- 平均体重:73.4 ± 7.3kg
被験者は、研究の目的と方法について十分な説明を受け、インフォームドコンセントに署名しました。
試験デザイン
- ランダム化比較試験
- 被験者を2つのグループにランダムに割り付け(低酸素群:10名、対照群:10名)
- 介入期間は3週間
- トレーニング前後に、サッカーの試合シミュレーションにおける走行距離やスプリント回数を測定
介入方法
低酸素群
- 標高2,500m相当の低酸素室(酸素濃度15.3%)でトレーニングを実施
- トレーニング内容:30mスプリントを10回、各スプリント間に20秒のレスト
- 週3回、3週間に渡ってトレーニングを実施
対照群
- 通常の酸素環境下(酸素濃度20.9%)でトレーニングを実施
- トレーニング内容は低酸素群と同じ
測定項目
サッカー試合シミュレーション
- サッカーの試合を模倣した運動負荷テストを実施
- 選手は、定められたコースをランニングし、ドリブルやパスなどの動作を行った
- テスト時間は90分で、15分ごとに5分の休憩を挟んだ
走行距離
- サッカー試合シミュレーション中に、各選手の総走行距離と高強度走行距離(時速19.8km以上)を測定
スプリント回数
- サッカー試合シミュレーション中に、各選手のスプリント回数(時速25.2km以上)を測定
データ解析
- 各群の測定結果を比較するために、対応のあるt検定を用いた
注目の結果
最も注目すべきは、低酸素群で見られたパフォーマンスの著しい向上です!具体的な数値を見てみましょう。
- 総走行距離:トレーニング後、+5.2%の有意な増加!
- 高強度走行距離:トレーニング後、驚異の+7.8%の有意な増加!
- スプリント回数:トレーニング後、+8.5%の有意な増加!
一方、対照群では、これらの項目に有意な変化は見られませんでした。
結論と考察
この研究から、低酸素環境下での反復スプリントトレーニングは、プロサッカー選手の試合中の走行パフォーマンスを向上させるのに効果的であることが示されました。 低酸素環境でのトレーニングは、体に通常よりも強いストレスを与えることで、より高い運動能力を引き出す可能性を示唆しています。
この研究結果は、サッカーだけでなく、他のスポーツのトレーニングにも応用できるでしょう。今後の研究で、このトレーニング方法がさらに発展していくことが期待されます。
論文引用:Faiss, R., et al. (2013). Repeated-Sprint Training in Hypoxia Improves Match Running Performance in Well-Trained Soccer Players. Journal of Strength and Conditioning Research, 27(9), 2454-2462.