中級サイクリスト向けLSDトレーニング:持久力を科学的に解剖
中級サイクリスト向けLSDトレーニング:持久力を科学的に解剖
サイクリストの皆さんならLSDトレーニング(Long Slow Distance)という言葉を聞いたことがあると思います。地味な練習と思われがちですが、実は持久力向上のための非常に重要な要素です。この記事では、中級サイクリスト向けにLSDトレーニングの科学的根拠、具体的な実践方法、効果を高めるヒントを、論文や数値データを用いて詳しく解説します。
1. なぜLSDトレーニングが重要なのか?
LSDトレーニングは、楽なペースで長時間運動を続けることで、持久力の基礎を築くことを目的としています。具体的には、以下の効果が期待できます。
- ミトコンドリアの活性化
- 脂肪燃焼効率の向上
- 毛細血管の発達
- 乳酸除去能力の向上
2. LSDトレーニングの科学的根拠
2.1. ミトコンドリアの活性化
ミトコンドリアは、細胞内のエネルギー工場です。持久運動能力を高めるためには、ミトコンドリアの数を増やし、機能を向上させることが重要です。
研究データ: HolloszyとCoyleの研究(1984)では、長時間低強度の運動は、骨格筋ミトコンドリア生合成を促進することが示されています。Holloszy, J. O., & Coyle, E. F. (1984). Adaptations of skeletal muscle to endurance exercise. Journal of Applied Physiology, 56(4), 831-838. 例えば、週3回、60分のLSDトレーニングを8週間行うことで、ミトコンドリアの量が約20%増加するという報告もあります。
2.2. 脂肪燃焼効率の向上
LSDトレーニングは、高強度のトレーニングよりも脂肪燃焼割合が高いことが知られています。脂肪を効率的にエネルギーとして利用できるようになると、グリコーゲンを節約し、より長い時間運動を続けることができます。
研究データ: Romijnらの研究(1993)では、低強度の運動は、高強度の運動よりも脂肪燃焼割合が高いことが示されています。Romijn, J. A., Coyle, E. F., Sidossis, L. S., Gastaldelli, A., Horowitz, J. F., Endert, E., & Wolfe, R. R. (1993). Regulation of substrate utilization and lipolysis during exercise. American Journal of Physiology-Endocrinology and Metabolism, 265(5), E799-E808. 例えば、運動強度50%VO2maxでは、エネルギー源の約60%が脂肪由来であるのに対し、75%VO2maxでは約40%に減少するというデータがあります。
2.3. 毛細血管の発達
LSDトレーニングは、筋肉の毛細血管を発達させ、酸素供給を効率化します。これにより、筋肉はより多くの酸素を受け取ることができ、持久力が向上します。
研究データ: AndersenとHenrikssonの研究(1977)では、持久運動は、骨格筋の毛細血管密度を高めることが示されています。Andersen, P., & Henriksson, J. (1977). Capillary supply of the quadriceps femoris muscle of man: adaptive response to exercise. Journal of Physiology, 270(3), 677-690. 毛細血管密度が10%増加すると、VO2maxが約5%向上するという報告もあります。
2.4. 乳酸除去能力の向上
LSDトレーニングは、乳酸の除去能力を高め、疲労を軽減します。乳酸は、高強度の運動時に生成される疲労物質ですが、低強度の運動によって効率的に除去されます。
研究データ: Brooksの研究(1985)では、低強度の運動は、乳酸のクリアランスを促進することが示されています。Brooks, G. A. (1985). Lactate: glycolytic end product and oxidative substrate during sustained exercise in mammals—the “lactate shuttle”. Medicine and Science in Sports and Exercise, 17(1), 33-33. LSDトレーニングによって、乳酸閾値が約5-10%向上するというデータがあります。
3. LSD = Zone2トレーニング?
LSDトレーニングは、しばしばZone2トレーニングと混同されます。 Zone2トレーニングは、心拍数やパワーゾーンに基づいて運動強度を定義する、より定量的なアプローチです。 一般的に、Zone2は最大心拍数の60〜70%、または乳酸閾値(LT1)付近と定義されます。LSDの定義は少し広くなり、強度Zone1~2とされる事が多い。
注意点: 心拍数は個人差が大きいため、正確なZone2を設定するには、乳酸閾値テストなどの専門的なテストを受けることをお勧めしますが、以降に紹介するトークテストやガーミン等のサイコンが示すZone2強度でも大きな差はないかと思います。
4. LSDトレーニングの実践方法
4.1. 適切な強度設定
LSDトレーニングでは、以下の指標を参考に強度を設定します。
- トークテスト: 会話ができる程度の強度
- 心拍数: 最大心拍数の60%~70%程度(目安)
- 主観的運動強度 (RPE): ボルグスケールで「楽である(6~8)」程度
4.2. トレーニング時間
LSDトレーニングの時間は、個人のレベルや目標に合わせて調整します。中級サイクリストの場合、60分~3時間程度が目安となります。
4.3. トレーニング頻度
LSDトレーニングの頻度は、週に2~3回が目安となります。週末にロングライドを入れるといいでしょう。
4.4. トレーニングのコース設定
LSDトレーニングは、なるべく止まらずに一定の強度を維持するのが理想です。室内ローラーで好きな音楽や動画を見ながら行ってもいいです。コース設定は平坦で信号の少ないところを選びましょう。しかし、苦行にならないようにしたいので、遠くのカフェや景色を楽しめるように工夫してみてください。
- 信号の少ない平坦コース
- 室内ローラー
- カフェライドや景色を楽しめるコース
5. LSDトレーニングの効果を高めるためのヒント
5.1. 栄養戦略
LSDトレーニングの効果を高めるためには、栄養戦略も重要です。
- 低GI食品の摂取: 血糖値の急上昇を避け、安定したエネルギー供給を維持します。
- 運動中の炭水化物補給: 長時間のトレーニングでは、エネルギー切れを防ぐために、定期的に炭水化物を補給します。
- 抗酸化物質の摂取: 活性酸素を除去し、疲労回復を促進します。
- 軽いカーボローディング: ご飯やパスタなどを前日から多目に摂るのは効果的。
5.2. 睡眠
十分な睡眠は、疲労回復とパフォーマンス向上に不可欠です。
- 十分な睡眠時間の確保: 7~9時間の睡眠時間を確保しましょう。
- 睡眠の質を高めるための環境整備: 静かで暗く、涼しい環境で寝るようにしましょう。
5.3. ストレス管理
ストレスは、パフォーマンス低下の原因となります。
- リラックス法: 瞑想やヨガ、ストレッチ、サウナ、入浴など、リラックスできる方法を取り入れましょう。
- 趣味や休息時間の確保: 仕事やトレーニング以外の時間も大切にしましょう。
6. まとめ:LSDトレーニングを賢く活用しよう
LSDトレーニングは、持久力向上のための強力なツールです。科学的根拠に基づいた正しい知識と実践で、パフォーマンスを最大化しましょう。個人の目標やレベルに合わせて、柔軟にトレーニングプランを調整することが重要です。LSDトレーニングを取り入れて、より強く、より長くサイクリングを楽しみましょう!
更に効果を上げたいのなら、低酸素でのLSDを入れることで酸素利用能力が向上する可能性が高くなります。大学駅伝の強豪では低酸素トレーニングは当たり前のようになってきています。