長距離ロードレース攻略の鍵は筋トレにあり!持久力だけでは勝てない現代レース戦略
長距離ロードレース攻略の鍵は筋トレにあり!持久力だけでは勝てない現代レース戦略
ロードレース、特に長距離レースは、持久力が重要であることは言うまでもありません。しかし、近年、レース展開の高速化やアタック合戦の激化により、持久力だけでは勝利を掴むことが難しくなってきています。
レース終盤のスプリントや、勝負を分けるアタックに対応するためには、爆発的なパワーが不可欠です。今回は、長距離ロードレースで勝利を目指す選手が、筋力トレーニングをどのように取り入れるべきか、科学的な根拠に基づいて解説します。
なぜ長距離選手に筋トレが必要なのか?
「長距離選手はとにかく走り込めば良い」と考えている方もいるかもしれませんが、それは古い考えです。近年、ロードレースの戦術は多様化し、より複雑になっています。
- レース終盤まで温存した脚を活かすスプリント力: 最後の直線でのスプリント勝負を制するには、並外れた脚力が必要です。持久力だけでなく、瞬間的なパワーを生み出す筋力も重要になります。
- 積極的なアタックに対応できるパワー: レース中盤から終盤にかけて、有力選手のアタックに追従したり、自らアタックを仕掛けたりするためには、高いパワーが必要です。
- 疲労困憊でもパワーを維持する力: 長時間のレースでは疲労が蓄積し、筋力も低下します。筋力トレーニングは、疲労に対する抵抗力を高め、パフォーマンス低下を最小限に抑える効果が期待できます。
- ペダリング効率の向上: 動作に必要な筋肉を強化すると、筋肉間の協調性が高まり、無駄な動きを減らす効果が確認されています。省エネにも繋がるので、ブルベなどにも応用できるかも知れないですね。
科学的根拠:筋トレは長距離選手のパフォーマンスを向上させる
Rønnestad BRらによって2011年に発表された研究では、筋力トレーニングが長距離サイクリストのパフォーマンスを向上させることが科学的に示されました。
研究タイトル
Strength training improves 5-min all-out performance following 185 min of cycling
掲載誌
Scand J Med Sci Sports 2011: 21: 250-259.
研究内容
この研究では、ウェル・トレインドのサイクリストを対象に、通常の持久力トレーニングに加えて筋力トレーニングを行ったグループ(E+S)と、持久力トレーニングのみを行ったグループ(E)を比較しました。12週間のトレーニング後、以下の結果が得られました。
- 筋力トレーニングを行ったグループ(E+S)は、ハーフスクワットの最大筋力が有意に向上
- 長時間のサイクリング後、5分間の全力パフォーマンスにおいて、筋力トレーニングを行ったグループ(E+S)は平均パワーが有意に向上
- 持久力トレーニングのみを行ったグループ(E)では、有意な変化は見られず
この研究結果から、筋力トレーニングは、長距離サイクリストの持久力だけでなく、レース後半における高強度パフォーマンスの維持にも貢献することが示唆されました。
ロードレース選手のための筋トレメニュー
それでは、長距離ロードレース選手は、具体的にどのような筋力トレーニングを取り入れるべきなのでしょうか?
基本となる筋力トレーニング種目
- スクワット: 体幹、下半身全体の筋力アップに効果的。特に大腿四頭筋、ハムストリングス、臀筋を鍛えます。
- レッグプレス: スクワットよりも安全に行えるため、高負荷でのトレーニングに適しています。
- デッドリフト: 全身の筋力アップに貢献。特に背筋、ハムストリングス、臀筋を鍛えます。
- カーフレイズ: ふくらはぎの筋肉を鍛え、ペダリング効率を向上させます。
- 体幹トレーニング(プランク、クランチなど): バランス能力や体幹の安定性を高め、パワー伝達効率を向上させます。筋トレ初心は手軽に始められます。
トレーニングのポイント
- 高負荷低回数: 各エクササイズ3セット、4〜10回反復できる程度の高負荷で行い、筋力とパワーの向上を目指します。
- 正しいフォーム: 怪我を予防するために、正しいフォームを意識してトレーニングを行いましょう。
- 漸進性過負荷: 徐々に負荷を上げていくことで、常に筋肉に刺激を与え、成長を促します。
- 休息: 筋肉の修復と成長には休息が不可欠です。トレーニング後は十分な休息を取りましょう。
- 専門家のアドバイス: 専門家のアドバイスを受けながら、個々の体力や目標に合わせたトレーニングプログラムを作成することをお勧めします。
- 初心者なら: まずは自重トレーニングから始めてみましょう。慣れてきたらペットボトル等をウエイト替わりにしたり、ジャンピングスクワットなどを取り入れると良いと思います
トレーニングの頻度とタイミング
- 頻度: 週2回程度の筋力トレーニングで効果が出ると思います。慣れたら回数を増やしましょう。
- タイミング: シーズンオフやベーストレーニング期に重点的に行い、レースシーズン中は頻度を減らすなど、調整しましょう。自重も織り交ぜてみるのもアリ。
- 持久力トレーニングとの組み合わせ: 筋力トレーニングと持久力トレーニングは、同日にまとめて行うよりも、別日に行う方が効果的です。
筋トレでロードレースのパフォーマンスを劇的に向上させよう!
Rønnestad BR et al. (2011) の研究結果が示すように、筋力トレーニングは長距離ロードレース選手のパフォーマンス向上に貢献します。持久力トレーニングに加えて、筋力トレーニングを計画的に取り入れることで、レース終盤でのスプリント力、アタック対応力、疲労耐性を高め、勝利に大きく近づくことができるでしょう。ワールドツアーチームの選手もSNSで筋トレの様子を上げているように、あなたも筋トレを取り入れてみてはいかがでしょうか。
また、低酸素筋トレは更なる効果が期待できます。
参考文献: Rønnestad BR, Hansen EA, Raastad T. Strength training improves 5-min all-out performance following 185 min of cycling. Scand J Med Sci Sports 2011: 21: 250-259.